親が借金を残して亡くなった場合、相続人がその借金を引き継ぐことになります。
こうした事態を避けるには「相続放棄」が有効ですが、放棄が認められないケースもあるのが現実です。
本記事では、親の借金を相続放棄できないケースと、その対処法を解説します。
親の借金を相続放棄できないケース
親の借金を相続放棄できないのは、以下のようなケースです。
- 単純承認が成立してしまっている
- 相続放棄の期限(熟慮期間)を過ぎてしまった
- 手続きに不備があった
それぞれみていきましょう。
単純承認が成立してしまっている
親が亡くなったあとで財産を処分・使用すると、「相続する意思がある」と判断されてしまい、単純承認が成立します。
たとえば、親名義の預金を引き出したり遺品を売却したりすると、相続放棄ができなくなる可能性があるため注意が必要です。
相続放棄の期限(熟慮期間)を過ぎてしまった
相続放棄は、「相続が発生したことを知った日から3か月以内(熟慮期間)」に家庭裁判所へ申述する必要があります。
この熟慮期間を過ぎてしまうと相続を承認したとみなされ、原則として以降の相続放棄は認められなくなります。
手続きに不備があった
相続放棄をする場合、家庭裁判所に対して申述手続きをする必要があります。
書類の記載ミスや必要書類の不足が合った場合や、裁判所からの照会書に対する回答が不十分な場合、相続放棄が受理されない可能性があります。
親の借金を相続放棄できなかった場合の対処法
親の借金を相続放棄できずなかった場合の対処法は、以下の通りです。
- 高等裁判所に即時抗告をする
- 債務整理をする
それぞれみていきましょう。
高等裁判所に即時抗告をする
家庭裁判所が相続放棄を認めなかった場合でも、不服がある場合は2週間以内に高等裁判所へ即時抗告できます。
抗告では、以下の点が争点になります。
- 相続を知った日(熟慮期間の起算日)が本当に正しかったか
- 単純承認の要件(財産処分など)を本当に満たしていたかどうか
成功するには、具体的な証拠と法的根拠を示す必要があるため、弁護士への相談が不可欠です。
債務整理をする
債務整理とは、借金の返済負担を軽くするために、法的な手続きで返済方法を見直す制度です。
任意整理・個人再生・自己破産といった選択肢があり、状況に応じて使い分けられます。
たとえば、将来的な収入の見込みがあれば、「任意整理」や「個人再生」で返済額を減らし、分割払いに変更することも可能です。
一方で、収入が見込めず返済が難しい場合は、「自己破産」によって借金を免除するという選択肢もあります。
まとめ
この記事では、親の借金を相続放棄できないケースと対処法について解説しました。
たとえ相続放棄が認められなかった場合でも、即時抗告や債務整理などで対応することは可能です。
状況によって適切な対応は異なるため、判断に迷うときは弁護士にご相談ください。