離婚する夫婦に未成熟の子ども(未成熟児。すなわち、身体的、精神的、経済的に成熟化の過程にあるため就労が期待できず、第三者による扶養を受ける必要がある子どものこと)がいる場合、その子どもと離れて暮らす親は養育費を支払う必要があります。これはたとえ離婚の際に「養育費を今後請求しない」という合意がなされた場合でも、扶養が必要な子どもに対して養育費の支払い義務があります(民法881条参照。扶養請求権放棄の合意の無効について裁判例としては名古屋家審昭和47年3月9日家月25巻4号59頁、宇都宮家審昭和50年8月29日家月28巻9号58頁等参照)。
相手が養育費を支払わない場合、電話やメールなどで催促しましょう。相手が応じない場合は内容証明郵便を出して相手に心理的圧力をかけます。それでも相手が支払わない場合、裁判所の「強制執行」という手続きを利用して養育費を回収することができます。請求の流れとしては、(1)裁判所の手続きや公正証書での養育費の取り決めがある場合、(2)裁判所の手続きや公正証書での取り決めがない場合の2つに分けてみていきましょう。
■(1)裁判所の手続きや公正証書での養育費の取り決めがある場合
●履行勧告・履行命令
家庭裁判所の調停、審判、判決で養育費の取り決めが行われた場合、家庭裁判所に「履行勧告」を無料で申し立てることができます。申立てがあると、家庭裁判所は養育費の支払い状況について調査をしたうえで、正当な理由もないのに支払っていない場合には、義務を果たすように勧告を行います。勧告は、電話や手紙を中心に行われ、呼び出しや訪問をする場合もありますが、強制力はないことに注意しましょう。
履行勧告に応じない場合は「履行命令」の申立てができ、家庭裁判所が相当と認める場合、相当の期限を定めて義務の履行を命じることができます。この命令に従わない場合は、10万円以下の過料による制裁が科せられますが(家事事件手続法290条5項)、支払い自体の強制力はなく、実益が少ないため、実際にはあまり利用されていません。
●強制執行
手元に判決書、調停調書、審判書、公正調書(強制執行認諾約款付きのもの)があり、期限までに養育費の支払いがない場合は、地方裁判所に強制執行の申立てを行うことができます。この手続きにより、相手方の不動産や動産(家財道具など)、債権(給料や預貯金など)の財産から強制的に養育費の支払いを確保することができます。なお、強制執行で給料を差し押さえるときは、給料の2分の1までを差し押さえることができます(民執法152条3項)。
■(2)裁判所の手続きや公正証書での取り決めがない場合
口頭や公正証書以外の書面で養育費の取り決めを行った場合、①地方裁判所に契約に基づく債務(養育費)の履行請求として訴えを提起する方法、ないし、②家庭裁判所に改めて養育費支払いの調停申し立てを提起する方法により、養育費を回収することができます。事案に応じて①と②のいずれか、あるいは双方を選択することになりますが、離婚後の相手方の生活状況に変化がある場合などでは、離婚勧告や離婚命令の手段を取ることができるという点からいっても②の調停を申し立てる方法を利用する方がよいでしょう。この点は弁護士に相談して決めましょう。
弁護士浦本与史学(浦本法律事務所)は、新宿区、文京区、世田谷区、千代田区を中心に都内における離婚・男女問題に関するご相談を承ります。ご相談者様との信頼関係や共感を重視し、ご依頼者様の希望にかなった解決が図れるようしっかりサポートいたします。離婚・男女問題でお困りの際は、当職までご相談ください。
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