「遺留分侵害額請求権」とは、被相続人の財産に対し、法律上、取得することが保障されている最低限の取り分である「遺留分」を侵害された際、その侵害額分を請求することができるという制度です。
この制度は、従来までは「遺留分減殺請求」と呼ばれていましたが、平成31年度の相続法改正の際に、内容と名称を改めて「遺留分侵害額請求権」となりました。
従来の「遺留分減殺請求」においては、遺産の共有状態が生じる可能性が高くなっていました。しかしそれでは、事業継承や持分権の処分に支障がでる恐れがあるため、改正されたのです。
以下にて、具体的に説明いたします。
例えば、死亡した被相続人にAとBの2人の子供がいたとします。
被相続人の遺言書には、Aには評価額1億円の土地と不動産を、Bには1千万円の預貯金を相続させる旨が記されていました。
これではBにあまりに不利な内容であるため、Bは遺留分減殺請求を行います。
では、Bは遺留分をどのように受け取ることができるでしょうか?
Aの土地や不動産を遺留分の割合だけ使うことになるでしょうか?これは非現実的です。
また、Aの土地や不動産を売却して遺留分の割合の金銭を受け取ることになった場合、被相続人の「Aに土地と不動産を使ってほしい」という思惑が達成されません。
このように、従来の遺留分減殺請求には、相続上の問題があったのです。
上記のような問題を解決するために、今回の改正において「遺留分侵害額請求権」が認められることになりました。
具体的には、遺留分侵害額請求権によって生じる権利を金銭債権としたため、土地や建物に共有部分が生じることがなくなったのです。
また、これによって遺留分侵害額を請求された側は、侵害額相当の金銭を用意しなければならなくなりますが、その際の負担を考慮し、支払いには「相当な猶予期間」を設けることも可能になりました。
この改正は、2019年7月1日に施行されました。
つまり、2019年7月1日以前に発生している相続であれば従来の「遺留分減殺請求」が適用され、それ以降に発生した相続であれば「遺留分侵害額請求」が適用されます。
遺留分という制度は、遺留分を請求する側にも、する側にとっても、疑問の多い制度です。
疑問やお悩みをお持ちの方は、お気軽に弁護士までご相談いただくことをおすすめいたします。
弁護士 浦本与史学は、お客様にとって最適な解決策を見つけるために全力を尽くします。
丁寧にお話をうかがい、粘り強く突破口を探し、お客様と一緒に問題解決にあたっていくことが私の強みです。
相続や離婚、家族間の金銭トラブルなどでお悩みの方は、当職までお気軽にご相談ください。
遺留分侵害額請求権とは?
浦本法律事務所が提供する基礎知識
-
遺産分割の流れ
遺産分割の手続には、協議、調停、審判等の手続があります。 遺産分割の協議がまとまれば、調停、審判等の手...
-
相続財産の評価方法
相続財産が発生した際、非常に大切なことは「相続財産を評価すること」です。 なぜなら、相続の際には、相続...
-
財産分与の基礎知識
「離婚する際は財産分与を行うと聞いたが、どういった制度なのだろうか。」 「財産分与は、具体的にどのよう...
-
相続放棄に関する相談を...
相続放棄をお考えの場合、弁護士にご相談いただくか否か、悩んでしまう方も多くいらっしゃることと思います。...
-
相続人に関する相談を弁...
■正確な法律知識 相続人の確定の際には、法定相続の正確な知識が求められます。また、戸籍の調査などの慣れ...
-
偏った遺言
Q.父が死亡し、「遺産は全て長男に相続させる」という遺言が見つかりました。兄弟姉妹で相続内容に差がある...
-
DV夫と離婚したい
■DVとは DVとは、ドメスティックバイオレンスの略称で、日本語では「家庭内暴力」のように訳されます。...
-
相続放棄の期限
相続放棄には、「熟慮期間」という名の期限が存在しています。 また、相続放棄すると決めた場合、家庭裁判所...
-
相続開始から申告までの流れ
被相続人の死亡から相続税申告までには、相続財産の特定、財産評価額の算出、遺産分割協議、名義変更という過...